海外の遺伝資源を利用するときには、生物多様性条約だけではなく、他の条約や国内法令を守る必要があります。

生物多様性条約・名古屋議定書・ABS指針

「生物多様性条約」は、地球規模で生物多様性の包括的な保全を目指す国際条約です。条約の第15条で、各国の遺伝資源はその国が権利を持ち、その利用には政府の許可が必要であることが定められています。
ABS(Access and Benefit-Sharing)は生物多様性条約の目的のひとつに記載されている重要課題であり、その実効性を高めるために決められた国際的なルールが「名古屋議定書」です。
名古屋議定書に基づき、利用国と提供国としての日本の国内措置を定めたものが、「ABS指針」です。
海外の遺伝資源を研究目的で使用する場合、提供国の法令に従い、提供国が定めたABSに関する手続きを行う必要があります。

 

植物防疫法

「植物防疫法」は国内の農業生産の安全を守るため、輸出入植物を検疫し、植物に有害な昆虫や微生物などの発生を予防・駆除することを目的としています。
農林水産省の植物防疫所では、海外からの病害虫の侵入を防ぐため植物検疫が行われています。
対象は植物であり、植物に有害な生きた昆虫や微生物などの侵入を検査します。
環境DNAウイルスの混入の恐れがあるため、検査の対象となります。
植物を輸入するには、輸出国が発行した検査証明書が必要です。
植物や生きた昆虫・微生物などで規制無でないもの、土・土の付着する植物などは輸入禁止品に該当し、原則として輸入できません。
しかし、試験研究目的であれば、手続きにより輸入を許可される可能性があります。

 

ワシントン条約

「ワシントン条約」は野生動植物の特定の種を保護することを目的とし、絶滅のおそれがあり保護が必要な野生動植物を附属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの3つに分類して国際取引を規制しています。
附属書Ⅰ:絶滅の恐れのある種で、取引により影響を受けるもの。
商業目的のための国際取引は原則禁止。
学術目的の取引は手続きにより可能。
附属書Ⅱ:現在は必ずしも絶滅の恐れはないが取引を厳重に規制する必要があるもの。
商業目的の国際取引が可能。
附属書Ⅲ:締約国が自国の保護のため、他の締約国の協力を必要とするもので、国ごとに指定。
商業目的の国際取引が可能。
生きているものだけでなく、動植物の細胞、標本、加工品も規制されています。

 

外来生物法

「外来生物法」は、特定外来生物の取扱いを規制し、防除措置を講じることで、生態系への被害を防止します。これにより、生物多様性の確保、人の保護や農林水産業の発展をとおして国民生活の安定向上を図ることを目的としています。
問題を引き起こす海外起源の外来生物を特定外来生物として指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入を規制し、特定外来生物の防除等を行っています。
しかし、研究目的などで、逃げ出さないように適正に管理する施設を持っているなど、特別な場合には許可されます。

 

カルタヘナ法

「カルタヘナ法」は、遺伝子組換え生物の使用について規制し、生物多様性への悪影響を未然に防止することを目的としています。
遺伝子組換え生物が自然界の生物へ影響を及ぼさないかどうかの事前審査や、適切な使用方法について定められています。
2種類の使用形態によって必要な措置や手続きが異なります。
第一種使用:環境中への拡散を防止しないで行うもの。
例)野外栽培試験など
第二種使用:拡散防止措置を講じて行うもの。
例)閉鎖空間での微生物実験など
第二種使用の場合の輸入:輸入後の国内での保管・運搬・実験の際には、二種省令に定める拡散防止措置をとる必要があります。
遺伝子組換え生物等について、宿主、核酸供与体、供与核酸などに係る情報を譲渡先から入手することが重要です。
第二種使用の場合の輸出:相手国がカルタヘナ条約の締約国か非締約国であるかによって必要書類などが変わります。
航空輸送の際には、航空危険物に当たるので特別な梱包が必要です。

 

その他の法令

・家畜伝染病予防法
・狂犬病予防法
・感染症予防法
・水産資源保護法
・鳥獣保護法

 

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