はじめに

研究のため輸入した海外土壌の分析を外部分析機関へ依頼したいという相談が日本の研究者からありました。しかし、この土壌は輸入禁止品であるため、許可条件に従って管理しなければならず、自由に分析機関へ送付することはできません。
本稿では、実際に外部機関へ分析を依頼した事例をもとに、その方法と留意点を紹介します。

1. 植物防疫法上の輸入禁止品

1) 輸入禁止品とは

植物防疫法では、日本に侵入すると農林業に重大な被害を及ぼすおそれがあり、輸入時の検査だけでは寄生や付着している病害虫の発見が困難な植物や土壌などを「輸入禁止品」と定めています。輸入禁止品には、土壌そのものや土壌が付着した植物、特定の地域から輸入される植物、検疫有害動植物などが含まれます。これらは原則として日本へ輸入することはできません。

2) 研究目的の場合

試験研究や展示などを目的とする場合には、農林水産大臣の許可を受けることにより、輸入禁止品を輸入することができます。許可申請には、輸入する試料の種類、研究目的、管理施設、試験方法、保管方法などについて明示する必要があります。
申請後、植物防疫所による検査を受けます。許可された場合、輸入許可指令書に示される許可条件に従って適切に管理しなければなりません。

3) 輸入許可後の管理

輸入許可指令書には、管理施設、試験方法、保管方法などの条件が定められており、これらを変更する場合は事前に変更手続きが必要です。また、許可を受けずに管理施設を変更したり、譲渡や移動を行ったりすると、許可条件違反となります。研究終了後も、試料の保管、廃棄などは許可条件に従って行う必要があります。

2. 外部機関へ分析依頼する場合

海外土壌の分析を外部機関に依頼する場合、2通りの方法があります。一つ目は、土壌を消毒して輸入禁止品としての管理を完了する方法です。二つ目は、分析機関を管理施設として追加する方法です。

1) 輸入禁止品としての管理を完了する方法

土壌の消毒条件は法律で一律に定められているものではなく、試料の種類や研究目的に応じて植物防疫所が個別に指定します。消毒方法としては、個別の許可条件において120℃で20分以上のオートクレーブ滅菌処理が指定された事例があります。許可条件に従って土壌を消毒し、植物防疫所により輸入禁止品としての管理が完了したと認められれば、外部分析機関へ送付できるようになります。
しかし、オートクレーブ処理によって、土壌中の無機態窒素や可給態リンなどの分析値が変化する可能性があります。そのため、処理後の土壌が処理前と同じ化学性を保持しているとは限らず、分析の目的によっては適さない場合があります。*1

2) 分析機関を管理施設として追加する方法

今回は、分析に影響を与えるオートクレーブ処理を避けるため、研究者は分析機関を管理施設として追加する方法を選択しました。

3. 分析機関を管理施設として追加する手続き

今回は、分析に影響を与えるオートクレーブ処理を避けるため、研究者は分析機関を管理施設として追加する方法を選択しました。

1) 植物防疫所への書類の提出

管理施設および管理責任者を追加するため、「輸入禁止品輸入許可条件の一部変更願」と、分析機関が輸入禁止品を受け入れて管理することを承諾する書面を提出しました。この一部変更願には、輸入禁止品の情報や分析機関における試験方法と保管方法などの管理方法、変更理由を詳細に記載する必要がありました。

2) 許可・輸送・報告

分析機関における現地調査が植物防疫所によって行われ、許可がおりました。輸送に当たっては、今回の輸入許可指令書に記載されているとおり、輸送中に散逸しないように厳重に包装し、輸入禁止品のみを送りました。分析機関は試料の到着を確認し、植物防疫所に到着報告書を提出しました。

4. 分析後の残余試料を研究者へ返還する手続き

研究者は、分析された残りの試料について、分析機関からの返還を希望しました。分析終了後も輸入禁止品として管理されているため、分析機関から研究者へ自由に返送することはできません。

1) 植物防疫所への申請

分析機関における管理を終了し、残余試料を研究者の管理施設へ移すため、「輸入禁止品輸入許可条件の一部変更願(移動・譲渡禁止条件の変更)」および「輸入禁止品管理完了状況報告書」を提出しました。植物防疫所が、分析機関における試料の使用状況と現物とを確認することにより、管理の完了を確認しました。

2) 許可・輸送・報告

植物防疫所から許可がおり、この申請に係る許可指令書(一部変更)に基づき、残余試料が研究者の管理施設に輸送されました。研究者は到着報告書を提出しました。

おわりに

今回の事例から、輸入禁止品であっても適切な手続きを経ることによって、外部分析機関で分析できることが分かりました。一方で、分析機関を管理施設として追加するためには、植物防疫所との調整や分析機関の協力が不可欠であり、十分な準備期間を確保することが重要です。
管轄の植物防疫所は関係する機関の所在地によって決まります。研究者の管理施設と分析機関を管轄する植物防疫所が異なる場合には、申請を受け付ける植物防疫所と、分析機関の現地調査を担当する植物防疫所が異なることになります。そのため、申請書類の提出先、現地調査の担当部署、連絡窓口を事前に確認しておくことが重要です。
分析機関を探す際、ウェブ上では輸入禁止品の分析が可能と見受けられる機関が複数ありましたが、実際に問い合わせると受入れが困難なケースがありました。今回の分析機関にも、輸入禁止品の管理方法や許可条件を十分に理解してもらう必要がありました。外部分析を実現するには、植物防疫所との調整だけでなく、分析機関の理解が不可欠です。

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